
財務力を上げる(レベル3)戦略的保有
戦略的保有による保険活用とは、財務力を高めることで能動的に保険への
依存度を下げ、保険のパフォーマンスを上げていく考え方です。
具体的には社内にリスクファンドを構築することによって積極的に小さなリ
スクを保有し、その保険料を優先順位の高いリスクに割り当てて全社的な保
険ポートフォリオを最適化しようとする取り組みです。
時間を要する対策ですが、保険を掛け続けることを考えると、意識的に取り
組むことで数年後には大きく保険ポートフォリオが改善され、全社的に効果
的・効率的な保険活用が実現できるはずです。
実際、毎年利益を上げている企業でも何年間も保険内容が変わっていない会
社もありますが、そういった企業はリスクファンドという概念がないために、
保険の効率化のチャンスを失っていると考えられます。
また、積極的な保有は、保険でカバーできないリスクに対するファンドにも
なりますし、間接的に事故を減少させることにもつながるため、企業価値を
大きく高めることになります。
具体的には図表6のように少しずつでもファンドがたまるのであれば、そ
れによって保有可能額が増加し、小さなリスクを保有して余った保険料を別
の優先順位の高い保険に割り当てることで、理想的な保険ポートフォリオを
実現します。
しかし、単にお金をためるだけでは有税引き当てになるため効率的とはいえ
ません。そのため、これらのファンドを補償を兼ねながら効果的に構築する
ために、セーフティー共済や生命保険等を積極的に活用することが有効です。
すでに役員の退職金準備等で含み資産を持っている企業の場合、それらのフ
ァンドを有事の際のリスクファンドとして捉えられれば、保険への依存度は
大きく縮小し、大幅な保険料削減とさらに理想的なポートフォリオを組むこ
とが可能になります。有事の際には取締役が責任を負うと考えると、リスク
マネジメントを推進していく上で、役員退職金をリスクへのファンド代わり
に活用することは役員のリスク感性を養う上でも有用です。

