経営環境の変化は新しいリスクと保険を生み出し、既存のリスクや保険にも影響を与えます。
その変化に対応できない企業は無駄な保険料を支払い、新たなリスクに対応できず、衰退していきます。
企業保険の種類と分類
保険商品にはさまざまな補償が入っており、明確な分類は困難ですが、大まかな分類と商品を
紹介します(図表3)。
①財物保険:企業の財物や資産に対して掛ける保険であり、一般的には火災保険や地震保険等
が挙げられます。時価額で掛ける場合と、再調達価額で掛ける場合があるので注意が必要です。
②賠償責任保険:企業活動に伴う債務不履行や過失によって第三者や第三者の財物に損害を与
えた場合の保険であり、被害者の属性等によって損害額は大きく左右されます。
③人的保険:経営者の死亡や就業不能リスクに対応する保険や従業員の業務災害、通勤災害と
いった労災の上乗せ補償、退職金や所得補償等の福利厚生に関する保険が代表的です。
④利益・費用保険:火災・地震等の災害や事故によって事業活動を停止した場合に減少する利
益等をカバーする保険であり、非常に重要ですが、掛けていない企業が多いのが実態です。
⑤その他:近年はリスクの種類の増加に伴い、新しい保険や企業活動を包括的に補償する保険
等が出ています。保険会社によって商品ラインナップが異なるので、さまざまな保険会社を扱
う代理店に確認することが必要でしょう。
最近注目される保険
①雇用慣行賠償責任保険:従業員に対する不当解雇、セクシャルハラスメントや差別の結果、
使用者である企業に発生する法律上の賠償責任が補償される保険です。近年は雇用に関する
トラブルや従業員に企業が訴えられるケースが増加しているため、必要不可欠な保険となっ
ています。
②サイバー保険:企業のコンピューターへの外部からの不正侵入による情報漏えいや破壊に
対する賠償責任が基本ですが、適用範囲を拡大した商品を扱う保険会社も増えています。
行政対応費用やセキュリティ対策費用、逸失利益等の費用や損失がカバーされる保険も出て
きており、近年急速に普及が進んできています。
③所得補償保険:所得補償保険は精神疾患等が増えている昨今において、非常に注目される
保険です。従来の通院・入院ではなく、就業不能に対して支払われる保険であり、業務上外
関係なく支払うことができるため、福利厚生の充実度が高く、人材の採用や確保のためにも
必要な保険です。
④D&O保険:近年会社役員の善管注意義務違反や、忠実義務違反等の任務懈け怠たい責任
を追及する株主代表訴訟が多く提起されていることから必要性が高まっている保険であり、
法改正により社会福祉法人や医療法人の理事等にも適用範囲が広がっています。会社を保険
契約者、役員を被保険者とする保険であり、対象となる役員の責任には「会社に対する責任」
と「第三者に対する責任」があり、役員が負担すべき「賠償金」と「訴訟費用」が補償されます。